【ダイアリ】花とアリス殺人事件とか。

好きな文体というものがある。
心地良く感じる文体で、すいすいと視線の先で文字が進んでいく。リニアモーターカー、びゅん♪

もちろん内容の好みも重要なところだけれど、僕は文体という点でも重要度高く食指が働くらしい。
その二つが揃ったときに、それを書いた人の固有名を意識し、そしてファンとなるのだろう。

僕は何人かの作家さんのファンである。
ファンといっても、その作家さんに会いたいとかSNSを追っかけるとか、そいうことをしたいとは思わないので、多くの人が言うようなファンではないのかもしれない。
新作が出たり、読んでない本があれば、優先的に購入し読もうとする程度。
そのくらいのこと。
でも、自称ファン。
ファンとはこういうものだ、という他人の物差しと比べる気もなければ、その必要もない。
これが僕にとってファンであるということ。以上。

ファンでなくとも、その作家さんのどれそれという作品が大好き、というのはある。そういう大好きな作品を書く作家さんなのだから、他の作品も読んでみたいと当然思う。けれど、それを全ての作家さんに適用していては読む時間が全然足りなくなる。
悔しくも、ある程度はファンになる対象を絞らねばならない。

花とアリス殺人事件は思えば、読むのがずいぶん遅くなったなと思う。
なんでかな。
まぁ開いてみれば一気に読んでしまった。
あっという間。リニアモーターカー、びゅん♪

映画や映画脚本という原作が先にある場合。それをあとから小説化するというのは、自らのテイストを殺さねばならないのではなかろうか。しかし、本当に殺し切ってしまえば、その人をノベライズ担当として選ぶ意味はなくなってしまう。
原作が醸し出すみずみずしさを殺すことなく、なおかつ自分であるからこそのノベライズテイストを加味しなければならない。そのバランス感覚とはいかなるレベルのものか。これはオリジナルを作るよりも、もっともっと難しいことのように思う。
超ハイレベルでハイセンス、必須!!

そう言えば、昔、文章訓練として簡単な漫画を文章化してみるということをした(すすめられたから、させられたとも言える(笑))。
絵をそのまんま文章化するだけ、ということで言えば、そう難しいことではない。
見た物の形を単語として抽出する。抽出した単語を繋ぎ合わせて文章になるようにすれば良いだけ。

『膝くらいの高さのテーブル。それをL字に半分囲うソファ。100インチの液晶テレビの両サイドをスタイリッシュなスピーカーが挟み込んでいる。見事なホームシアターシステムだ』

まぁそこそこ良い感じのリビングをただ文章化すればこんなふうに誰でも書けるだろう。
しかしそれでは誰だってできてしまう。
テイストを入れねばならない。

『そのテーブルでパスタを食べようとするときっと腰を痛めることだろう。だからソファが必要だったのだ。ふかふかのソファは座ればぎゅむぅと身体がめり込む心地良さがある。パスタを噛むのを忘れて眠りに陥ってしまいそうな。いやいや、そうはならないのである。視線を前に向ければ大きな液晶画面がこちらを睨んでくる。王様の脇を選ばれし近衛兵が守っているかのように、凛とたたずむスピーカーがその脇を固めてこちらを伺ってくる。彼らが本気を出せば、視覚と聴覚という名の無数の槍が、激しく五感を突き刺してくるだろう。ゆえにソファがもたらす心地良さは眠気になどならない』

即興で陳腐だけれど、こうなるとややテイストが加味されるのではなかろうか。
そういうこと。
まぁ、残念なくらい下手くそだけれど。

普通はテイストを入れようと意識しても、僕がやらなくても良かったのではないか、なんて思える文章が出来上がるのがせいぜいだ。
もっと言えば、この先、そういう誰にでも同じように表現される文章化はAIができるようになるだろう。
ん? すでにできているのかな? 
わかんないけれど。

AIにできない文章化とは、要するに原作を殺すことなく、オリジナルテイストをどう組み込めるかということなのだろう。
ほんとに、これは難しい。
できた、と思っても、それは自己評価にすぎないことがほとんどだ。
読者の誰が読んでも、誰が書いたのかわからないという物になっている可能性の方が高いのだから。
(2020.05.11-nonora.typewrite)