【レビュー】往年のアイドル~奥田庵~ 

奥田庵・著の掌編小説集。
装画は増田佳子氏。

まずは【掌編】について。
明確な定義はありませんが、掌編とは『短編より短い物語』のことをさします。

僕・乃々が執筆する際の目安としては、短編は5000文字くらいからという感じなのでそれより短いものが『掌編』という感じ。
原稿用紙換算すると400字詰めで10枚程度までを『掌編』にするのかな。

そんなわけで【往年のアイドル】1冊になんと44編の物語が詰まっています。
最初の驚きは、目次でしたね(笑)

一般的な人は1分間に平均500文字程度読めるということですから、長めの物語でも読了に10分もかかりません。
短い物ならばカップラーメン完成までの待ち時間にちょうどイイ!!

44編それぞれのレビューをするわけにもいきませんので、全体を通して感じたことをぼんやり羅列しようと思います。

奥田さんの文体の特徴は、昔も今もその読み易さにあります。どのようなシーンでも文がごちゃごちゃすることがないので、すっと読めるんです。
掌編の場合は、少しでも文章がごちゃごちゃしてしまえばそれだけでアウトですから、実はこれが最も大きなポイントだったりします。
読み手としてはたった3分の空き時間でもすんなり読むことが可能ですし、書き手視点でみても片意地の張りを全く感じさせないナチュラルな文体は参考になるかと思います。

内容については、キーワードを思い浮かべるとすれば、
『ノスタルジック』『青春』『現代社会』『なにげない日常』『迷い』『傷』『再生』『小さな前向き』
などでしょうか。

僕が奥田作品で最も好きなのは、男女の出会いにちょっとしたファンタジーで色づけされているもの。
奥田さんのファンタジーは、ファンタジーと言うほど大仰なものではありません。マジックリアリズムと呼ばれる『現実と非現実の境界をあんまり感じさせない、さり気ない不思議』を男女の出会いの接着剤として使うのです。きっと、あくまでも『現実を描きたい』という思いが奥田さんの中にあるのではないかな、なんて感じます。
このさり気ない奇跡のような感覚が、くすぐったかったりします。
書き手視点で評価するとすれば、そこに触れたとき「うまいっ!」と手を叩く感じです。
【往年のアイドル】の掌編の中にも、この『男女の出会い~マジックリアリズム添え~』がありますので、それがどのタイトルなのか見つけてみるのも一興かもしれません。

あと掌編なので、物語の全てに解が示されているわけではありません。
中にはぼんやりと終わりを迎える物語もあります。
しかし、それに対して「で、解は?」と求めることは野暮ってものです。
『解』が確実に用意された物語がいいのならば、長編を読むべきでしょう。
これは掌編です、何もかもを描くわけにはいきません。
掌編は基本的には『特定の視点から見た、ちょっとした一場面を切り取り描くもの』です。
描かれる視点からわからないものは描けないし、それを描こうと思えば、違う視点で場面を見直さなければならなくなります。そうなると掌編ではなくなり、短編、中編となり、創作の前提を破ることになります。
そんなわけですから『解』のない物語に対しては、読者自身が自由に「きっとこうだったんだ」と想像で物語の先を思い描くのが良い作法なのではないかな、なんて思います。

今回は【往年のアイドル】を読んだ上で書いていますが、他の誰の掌編作品に対してもいえることだと思うので、参考までに。

ま、如何にせよ、掌編は気楽に読む。
一気に読まず、本を開いては閉じて、また開いては閉じてを繰り返しながらちょっとずつ読む。
それがイイ♪

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