【エッセイ】とある小説賞の受賞について少々……その3

2020年3月28日

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受賞式当日、求められてもいない手土産を懐に忍ばせ、意気揚々と都内へと向かう。 

服装は何でもいいと言われたので大仏の着ぐるみで行っても良いということ。しかしその勇気なく、面白みのない普段着で。
一泊の予定で、持ち物も特に指定はない。手ぶらでも良いのだが、妄想が炸裂し何を求められても応えられるようにと、ノートパソコンやら本やらをキャリーバッグに詰め込んだ。いったい何泊するんだ、な意気込みである。

新幹線の中で、数時間後に行われる受賞式の妄想をさらなる高みへと昇華することに余念ナシ。アハ、アハ、アハ。ヨダレは大丈夫だったろうか。
だーかーらーそんな大きな賞じゃないっちゅーに!!

東京駅は地方人には難易度が高いと聞くが、人間一人が感じられる空間認識は東京だからといって変わるものではない。大阪駅でややこしいなぁ人いっぱいだなぁと感じるのと大差ないのである。だから問題はない。普段通り冷静に迷子になる。焦ったぁ~。

駅員さんやコンビニ店員さんなどにウインクなどをしているとあ~ら不思議、なんやかやしていると僕はビルの前にいたのである。
そこは指定された集英社のビルで間違いないようだった。
見上げると、空の上まで突き抜けているのではないかと思えるほどの高層(※真下から見上げるとたいていのビルはそう感じられる現象)。

キレイなビルだった。見慣れている人にはありふれた建造物に思えるのだろうけれど、僕には未来的建造物であるかのように感じられる。超合金ダイヤモンドコーティング。光を眩く反射させ、威厳と威圧感を放出しているかのよう。なんて言えば、言いすぎだろう。すみません。しかし、ちょっと場違いなとこ来ちゃったなぁと怖じ気づいたのはほんとうの話。しかして、まぁ規定の時間があるからふわふわした気持ちのまんま入って行くしかないんだけれど。
中はラスボスのダンジョン、魔の巣窟になっていた、ということもなくいろいろが一般的な配置のオフィスビルであった。

メールで案内されていた通り、受付で入館手続きを済ませ、そこで新たに教えてもらった部屋へと向かう。
来客者用のバッジを胸につけて。
熟練の警備員さんの手招きに従い、エレベーターではるか高みへと向かう。

もしもこれが壮大な詐欺で、上階にて軟禁&ぼったくりに合えばひとたまりもないだろう。怖い人たちに囲まれ、人生の髄から搾り取られそうになっても時すでに遅しである。かくも名声やら権威やら威厳というのは人の冷静さを攪乱するものなのである。

僕はそんなことに対する危機意識を抱くこともなく、警備員さんの笑顔に招かれるがままに逃げ道がより限定される上階へと向かうことになった。

幸い、ダイハードな展開が待っていることもなく、そこは本当に集英社のビルだったので僕は今も生きています。

さて、空いている会議室に勝手に入り、案内を受けた通り椅子に座って待つことに。
しばらく一人ぼっち。ソワソワしながら待っていると、扉が開き、一人の男が入ってきた。
その者は僕と同じ受賞者のひとりか、あるいは極ど、じゃなくて・・・・・・。

〜その4に続く〜

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(2020.3.22-nonora.typewrite)