超節約!!彼女驚愕、うれしはずかしサプライズ旅行の㊙♪

エッセイ/essay

僕は昔、車で日本一周の旅に出たことがある。
日本一周とは言っても沖縄には行っていないし、多くの県はただ道を通り過ぎただけというような投げやりなものであった(笑)

従って、知人などには「日本一周ぢゃないぢゃないか!」とお叱りを受けることがある。ごもっともである。
しかして僕はそんな真っ当な意見など求めていない。思いやりのある知人ぶるのならば「うんうん、世界一周に匹敵するネ♪」くらい気の利いた皮肉を言ってほしいものである。

さておき、その時、行く先々で気が向けば主要都市を歩いたりした。
そこで感じたことがある。

晩夏の朝。東北のとある都市の駅前の商店街を歩いていた。
出勤するサラリーマンや登校する学生などその他多くの人が足早に行き交っている。そんな中にのほほんとした僕は混ざり込んでいた。

僕の両脇を通り過ぎる空気の流れは忙しない。けれど、息が詰まるようなものではない。どことなくスッキリしている。足早に通り過ぎていく人々が生み出す『無心』というのか『朝から眠い怠いコンチクショー』というのか、そんな寝起きて間もない茫漠とした運動エネルギーを、朝の爽やかな空気と眩い陽光が良い塩梅で薄めているからなのだろうか。あるいは、仕事をせずにぶらぶらと旅行気分丸出しだからそう感じるだけなのかもしれない。愉悦愉悦。

目的は特になかった。観光するでもなければ、お食事処を探していたわけでもない。通りすがりに気が向いたから車を止めただけのことである。ぶらり途中下車、的な。
そんなだからふらふら歩く。キョロキョロする。目標を定めない『観察』とでもいうような、そんな感じであった。
僕は兎に角、多くの人のこと漠然と見たのだと思う。

また旅は進んで、今度は九州のとある都市の駅前で同じようにぶらり途中下車をした。当然のことだけれど、見回すと何もかもが違う。説明し出したらキリがない、という説明が真だ。
けれども、僕は、その場を東北のとある場所と、同じ場所だと錯覚したのである。

そこでふと感じてしまったのだ。
ここにいる人も町の構成物にすぎない、という感覚でいることを。

外見の特徴が全く同じ人なんていない。例外なく千差万別である。それなのに、全く同じ人物が同じように町の構成物として存在しているように感じてしまうのだ。
東北の町にいた人がそのまんま九州の町にコピーされてきた、という感覚。
いわばゲーム世界のNPC(村人とかそのへんうろちょろしてるヤツ)に近いイメージ。極論、僕が目にした人々の全てが機械仕掛けだった、と言われても『人間の形』をしている以上、どうだって良いという感じなのだ。
それくらい僕にとって、その場にいるたくさんの人を、個々で存在していると認識できなかったのである。

しかして、考えてみれば僕のこの認識が間違っていることは容易に分かる。
その場にいた人全てが固有の名前と人格を持ち、個々として認識できる唯一の人として存在している。誰一人として例外はいない。あたりまえのことである。
東北のとある都市で見かけた人はその場でしか見かけることが出来なかった唯一の人のはずであるし、同様に九州のとある都市で見かけた人もまた同様に唯一の人であるはずだ。間違いなく。

では、僕はどうして頭では個々であることを理解しているのに、個々として認識できなかったのか。
それはその土地もそうだけれど、その人達もまた僕にとって日常的ではないからだと考えられる。
人生でたった一度、顔形すらはっきりと認識できないくらいの刹那の間の邂逅にすぎない人は、僕の日常には入り込んでは来ないし、僕が相手の日常に入り込むこともない。
互いに非日常的存在なのだ。
ゆえに、認識ができない。

これは、いわば人が持つ『非日常的なことに対しての認識が甘い』という性質がゆえの現象だと言えよう。
この性質を利用しない手はない。
朗報である。
心せよ。
このトリックを活かせば、節約遠出旅行を簡単に演出することができるのだ。

①眠い彼女を車に乗せる
↓↓↓
②とろとろゆっくり車を走らせる
↓↓↓
③彼女寝る
↓↓↓
④車、スピードアップ
↓↓↓
⑤隣町の看板などがないところに到着
↓↓↓
⑥彼女起きる
↓↓↓
⑦あなたは言う「ようこそ遠路はるばる北海道のとある町へ」
↓↓↓
⑧彼女びっくり!♪

きっと彼女はとても驚いたことだろう。
頬を赤くした彼女は、そして言うのだ。「え、私ってそんなに長時間眠ってたの?!」と。

【本項のまとめ】
可愛い彼女なんぞには小細工などせず、ちゃんと北海道なりアラスカなりに連れて行ってあげてください。
大切なことは、このようなフザケタことをしてもふわふわした感じでいられる二人であることだっ!!

だっ♪
もぅ💛どんだけサプライズなのよっ!!

written by K.Mitsumame

コメント