SFの定番と言えばタイムリープである。
主人公が過去へ行ったり未来へ行ったりすることで現在の何かを変えようとする、というのがストーリー構造の根幹となる。
ここで過去や未来について、どうでも良いことを考察してみるのも悪くないと思ったわけである。
興味のある方は、このままお付き合いください。
タイムリープには、主人公が何かにぶつかった衝撃で突然過去にワープしたりするものもあれば、タイムマシーンにより過去や未来にワープするものもある。
最近で最も有名なタイムリープものといえば新海誠監督の【君の名は】だろう。『人物の入れ替わり』と『タイムリープ』の掛け算がストーリー最大のギミックとなった名作である(あくまでも私見)。
この他、これまでに無数のタイムリープを題材に使った作品が存在している。読者諸氏各位、ほぼ全員がそれぞれ思い当たるSF作品があることだろう。
そんな作品のほとんどが時間軸の移動について言及してはいるが、実は過去や未来そのものの存在については言及していない(※)。
と、言われたところで『?』と首をかしげてしまうことでしょう。
どういうことかと言うと……。
僕達人間の身体はあくまでも物体であり、したがって物体が着地できる空間以外には存在することができない。つまり存在しない場所には移動ができない存在なのだ。
たとえば過去にワープする場合、過去という空間が存在しているという前提がなければ、ワープなどできはしないのだ。
タイムマシーンの開発は、過去へ飛ぶ技術の構築ばかりが課題とされているが、過去へ飛ぶ技術が完成したところで、過去という空間が存在していなければ飛ぶことなどできないのだ。
『今』という概念があるから『過去』という基準を設けることが可能となる。
ゆえに主体はあくまでも『現在』にある。
したがって『過去世界』はあくまでも『今』に付随する形で存在していなければならないのだ。
過去に飛ぶから、それに合わせて都合良く過去世界が突然出来上がる、というのでは『タイムワープ』ではなく『過去製造』ということになってしまうのだ。それはタイムワープとは比べ物にならないくらいすごい技術ではなかろうか。
そもそも主人公が過去へ飛ぶのは、そこで何らかの行動を変化させることで、過去そのものを改変することが目的であったはずだ。簡単にいえば『過去を変え』に行っているのだ。もしも【過去製造】ができるのならば、主人公が過去に行って必死になって過去を変える努力をする必要などない。最初から主人公が思い描く過去を製造してしまえるということになるのだから。そうなると葛藤と紆余曲折が面白い物語が成立しなくなってしまう。
しかし、タイムリープものの物語はとっても面白い♪
よって、タイムリープもののほぼ全てが、あくまでも過去へ時間軸を移動しているだけであり、過去を作ることはできない、という前提なのだ。それは過去世界あるいは未来世界が自然な形として現在に存在しているということを意味してしまう。
つまり物語上、過去や未来へのワープをしているものの全てが、過去や未来が現在と同時に存在し、今も同じように1分1秒を刻んでいるという前提になるのだ。
しかしそうなると、時間軸の違う世界というのは果たしてどれほどの数、存在することになるのだろうか。
たとえば1秒刻みの過去と未来が存在するとしても、もはや数えきれない世界が同時に存在し、同じ速さで時を刻み続けていることになる。そんな1秒にしても、最小単位ではない。時間はもっともっと細かくすることができる。その全ての数だけ別の時間軸の世界が同時に存在していなければ、過去へ行く技術を使っても、何もない世界に到着することになってしまうのだ。
1秒前の自分の過去の世界、2秒前の自分の過去の世界、3秒前の自分の過去の世界…………という具合に、延々に自分を主体にした過去の世界が存在し、現在の自分の世界に続いてきている、あるいは先を進んでいる、という少々気味の悪いことになるわけだ。
もちろん人はそれぞれ全員が主体である。僕もあなたもあの人も、その全てがその人自身の時間の主体である。したがって世界は『時間の数』×『人間の数』存在するという果てしないことになってしまう。
たとえば、もしも今から見た過去世界が存在しているのならば、織田信長が今も生きて桶狭間で戦っているということになる。こうなると『人は延々に死なない』という考え方が可能にもなるし、生まれてから死ぬまでの全て過去と未来の世界が今もずっとずっと存在し続けていることにもなるので『時間は延々に停止し続けた状態にある』なんて考え方もできてしまう。
これがこの世の真実の構造というのならば、非常に面白い世界観だとは思うけれど、その世界観を体感することは不可能なので、現実的とは成り得ない。そしてややこしい(笑)
やはり、僕達の世界は『現在』のみ存在し、過去や未来の世界が同時に存在している、ということは僕には考えにくい概念だ。
よって、
【本項のまとめ】
タイムマシーン開発には過去や未来へ飛ぶ技術のほかに、過去や未来の世界を作る技術も同時に搭載しないといけないと思います。大変だと思いますががんばってほしいと思います。そして僕の人生、過去からやり直させて頂きたいお願いしますほんとに、切に!!
(※)僕が知っている範囲なのですが、アニメ『STEINS;GATE』は過去の世界の存在そのものを無数の時間軸という形で言及されています。名作です(私見)。
written by K.Mitsumame
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