世界イチ、否、宇宙イチのやさしさとは何か?(笑)

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相手にやさしさを求める人は多い。
しかし、そうは言いつつも『やさしい人の見分け方が分からない』というのが正直なところではなかろうか。

実際、やさしさを求め、そう思って交際をスタートさせてみたものの、蓋を開けてみれば全然やさしくなかったというのはよくあることだ。最悪の場合、バイオレンスだったなんて真逆の人であることだって大いにあり得る。実に嘆かわしいことだ。

このように、人を見誤ってしまうのは『やさしさ』の正体についてよくよく考えたことがなく、ただ漠然と『やさしそう』という感覚に判断を委ねているからだ
これは、たとえば、あなたが『スマーフォン』がほしい、と求めたとする。しかしスマートフォンを正しく理解していないことで、『カマボコの板』を渡されて「やったー!!」と嬉しくなるようなものだ。
あなたは『カマボコの板』を渡されて、「新しいスマホ買っちゃった♪」なんて、とっても愛らしいドジっ子的なことを本心から言えるだろうか。
言ってみてほしいところだが、言えまい。
恥ずかしいもんね、萌えてきゅぴんきゅぴん、みたいなん(笑)

そうではなく、カマボコの板を掴まされないで済んでいるのは、『スマートフォン』がどういうものかを理解しているからだ。だから、それを手に入れる段階で、正しい判断基準を適用できる。

しかし、人は物理的なモノに対する理解には積極的だけれど、精神的なモノに対する理解には消極的なのだ。ここに過ちの根源がある。

やさしさを求めるのならば、『やさしさ』が一体何なのかを、論理的に理解しておかなければならない。
この機会に『やさしさの正体』について知り、そして相手を見極める手助けに、是非是非して頂きたいと思う。

さて、あなたは本当のやさしさとは『何か』答えられるだろうか。
おそらく、答えられないことだろう。
なぜならば、やさしさとは非常に漠然とした概念であり、言葉だけでは上手く説明として還元できないものだからだ。

それこそ、全く同じ行為をしようとも、時と場合によってやさしい行為となることもあれば、迷惑行為となることだってある。受け取る人の感性にもよるし、誰がその優しい行為をしたのか、という点でも評価は左右する。
基準などなく、『やさしさ』に共通項を見つけ出すことは非常に難しい。

したがって、交際相手などに『やさしさ』を求める人が多いと思うけれど、相手が全然やさしくないと不満を抱いている人は、『何をされてもやさしいと思える感性を手に入れる』ことで、その条件を満たすことも可能というわけだ。

相手に求めるか。
自分に求めるか。
このように真逆の観点からアプローチできるという時点で、その曖昧性の高さが知れるというもの。

しかし、この世の中に、全人類共通の『本物のやさしさ』が存在することを知っているだろうか。
このやさしさに触れた時、あなたは、幸せな気持ちになるかもしれない。あるいは、同情することもあるのかもしれないし、またあるいは、嫉妬するかもしれない。
如何にせよ、やさしさを求める場合、これから述べる『本物のやさしさ』がその相手に垣間見れる場合は、間違いなくやさしいココロを持っている人であると確信しても良い。是非、交際相手候補、お友達候補、使い勝手の良い都合の良い奴候補などにすることをおススメする。

まず、あなたは、やさしい行為を挙げるとすれば、どのような具体的な行動を挙げるだろうか?

【いつも食事を奢ってくれる】
悪くない。しかしありきたりすぎる。3点だ。

【落ち込んでいる時に、何も言わずとも的確に励ましてくれる。実際、救われる】
悪くない。しかし弱っている時はたいていのことが有難く感じてしまうものなのだ。励ましてもらったから立ち直ったのか、ただ時間経過したから立ち直ったのか、その判断は難しい。20点だ。

【横断歩道を渡れずに困っている足腰の弱った老婆をおんぶしてあげる】
悪くない。そして非常に惜しい。なぜ横断歩道のところだけしか運んであげられないのか。一体どのような気持ちでいたら『ハイ、ここまで。あとは自分で歩けっ!』と降ろせるというのだろうか。もしかしたら『ここから先もおんぶしてほしければ有料ね♪』とでも言うのではなかろうな。さすがは課金システム隆盛の時代と言わざるを得ない。実に効率的で実際的な考え方ではある。
しかしおばあちゃんが横断歩道の前で困っているのは課金ゲームの話ではない。リアルなのだ。
恋愛などで良く言われている、こんな名文句をご存じないだろうか?
『中途半端なやさしさはむしろ相手を傷つけるだけ』
この世にはそういう矛盾した事象というのがあり得るのだ。もちろんおばあちゃんに『恋をするな』と言っているわけではない。したければお好きにどうぞ♪ ハイ、70点

【ハンカチを落としたことに気づかなかった時、拾って追いかけてきてくれた】
悪くない。しかしハンカチを落とすことがそもそも少ない。だからといって、やさしさを求めるがあまりワザと、イケメンあるいは美人の前でハンカチを落とす、という行為もあまり褒められたものではないぞ☆ せいぜい99点といったところだろう。

他にもさまざまなやさしい行為を挙げることができるだろう。
そのうち100点満点の行為は、どれほどあるだろうか。
かの有名な『ハンカチ拾い』ですら99点なのだ。
100点満点の果てしなさが、思い知らされるところだろう。

しかし案ずることなかれ。
そして驚くことなかれ。
これから僕が紹介するやさしき行為は【10000点】である。
1万点
感動秘話はじまりはじまり~♪

自分で痛みを経験しなければ、人の痛みは分からないように、
自分で本当のやさしさを経験しなければ、到底人に本当のやさしさを与えることなどできはしない。
この男は、本当のやさしさを経験することになる。ゆえに、本当のやさしさが相手にどういう精神状態をもたらすものなのかを知っている。
それは本当に心地良い安心感をもたらす。
それは不安からの解放をもたらす。
それは……。

その男は、昔は決してやさしい男ではなかった。
どちらかと言えばガサツで、女性に対しては上からモノを言うようなところがあった。
彼女がいた。
半同棲状態。
その部屋は8畳。中心にちゃぶ台が置かれている。
「おい、テんメーコラ、ちゃー持ってこんかいっ!」
男はちゃぶ台の上にあぐらをかいて座り、テレビを見ていた。
「え、何っ! ちゃ、ちゃ~ぁ?」
カウンター式になっているキッチンから彼女が飛び出して、ちゃ~ぁ、をした。
「そんなんええねん、ちゃーや、ちゃー」
「だから、ちゃ~ぁ?」
関西で有名な『たむけん』のネタのごり押しである。可愛い彼女だ。
「テんメー、ふざけとんのか、あぁん? 俺が何でちゃぶ台の上座ってるか、分からんのかっ?」
「は・て・な?」
首をかしげる彼女。可愛い。
「ちゃー無いからに決まってるやろがっ! ちゃぶ台に何も用意されとらんから、こうして座って見せとんねん。皮肉や皮肉。気づけやっ!」
「なるほどぽんっ!」彼女はお口をまんまるにして、手を叩いた。そして男が座るちゃぶ台に近寄り 、天板の端を両手でつかんだ。
それから叫んだっ。
「わっかるかーいっ!」
「ちょ、テメッ、何すんねんっ!」
「ぐぬぬぬぬ、ちゃぶ台返し。しかし、重くてびくともしないというオチが秀逸」
「はぁ? お前アホやろ。もうええわ、ええ」
男は、彼女の額をペチリと叩き、立ち上がる。
「風呂入ってくるわ」
そう言って、リビングを出て行った。

……………………
ここで、彼女にインタビューをしてみた。
【かわいいですね、行動が】
「いいえ、そんなことありません」
【やや、ずいぶん口調が硬いですね。緊張なされてる?】
「いいえ、そんなことありません」
【彼氏に見せていた柔和な印象がまるでない】
「そうですか」
【そうですよぉ。何か理由でも?】
「ええ、まぁ……」
【話してもらえませんか?】
「はぁ、まぁ大した理由でもないのですが、彼がそうしないと怒るので」
【なんですって! 酷いっ!】
「でも、彼氏なので」
【やさしい男なんて、他にいくらでもいますよ。考え直してみれば?】
「…………」
【私の知り合いにね、独身のくせに超紳士的でやさしすぎる良い男がいるんですよぉ】
「へぇ」
【ご紹介しましょうか?】
「はぁ、まぁ、うん、そうですね。やさしい……ですか」
【ええ、とっても。乃楽という奴なんですけどねっ!】
……………………

ちゃぶ台返しが不発に終わり、リビングにて置いてけぼりをくった彼女が『ハッ!』となった。
そして叫ぶっ。
「パンツッ!」
風呂に入った彼の着替えと、タオルもろもろを準備しなければならないのだ。
彼女は慌ててお着換えセットを用意し、脱衣所へと向かった。
シャワーの音は聞こえない。キュッという彼の足裏が滑る音が、ひとつ聞こえた。
スモークガラスに彼が少しだけ動く影が透けて見える。その位置は低い。
彼女はこっそりとバスルームの扉を開いた。
彼の頭が泡まみれになっていた。
そうしてその姿に、彼女は唖然として、止まってしまうのだった。
あれだけガサツで、乱暴な男が、まるで別人のようだったからだ。
なんてやさしい手付きなのだろうか。
ゆっくりとゆっくりと10個の指の腹を使って、やさしくやさしく頭皮を円を描くように撫でている。
もう十分綺麗になっている。洗う、という目的はすでに果たされているはずだ。にも拘らず、彼は一向にシャワーを手に取ろうとしない。
あり得ない。
男なんて、ゴシゴシシャッシャと乱暴にシャンプーを泡立て、ものの10秒で流しに入るもの。実際、彼のシャンプーシーンを何度も見たことがあったが、ジャンジャカと頭皮に爪を立ててこする音が聞こえるほどであった。
それが今はどうだろう。
無音。ゆっくりとゆっくりと頭皮を揉む。何度も何度も繰り返し、同じ場所を念入りに。その挙措に彼の心のありようが現われているかのようであった。
彼女は愕然がくぜんとその様子を見つめている。
自我の半分が異界に持っていかれたかのようだ。
茫然半自失。
「あっ」
そういえば、最近、排水溝に彼の髪が多く絡まるようになっているなぁ、とは思っていた。そして雨の日など特に、彼の髪の毛の間から黒ではない別の色がうっすらと垣間見えることも多くなっていた。
思わず漏れ出た声に、彼氏が勢いよく振り返った。
泡まみれの顔。液体が目に入らないように片目をほっそりと開けている。
「なっ、おまっ!」
彼は彼女の乱入を予期していなかったのだろう、驚いて言葉を詰まらせた。
「み、見んなやっ。あっちいけボケェッ!」
焦燥がそのまま声の大きさに反映されている。みっともなさだけが際立ってしまう。
彼女はその声に「ハッ」と我を取り戻した。
そしてぼそりと言った。
「私にだってそんなやさしさ見せてくれなかったのに」
「は、はぁん?」
彼女の目には涙が浮かんでいた。
激しい嫉妬、そして憧憬しょうけい
「酷い」
「はぁ、俺が何したってん?」
「ぐすん。良いの。良いのよ。私が勝手にやさしさを求めすぎてしまってただけなんだもん」
「だから何の話やっ!」
「私ね、やさしい男性を紹介してもらえることになったんだぁ。えへへ」
男が立ち上がった。So say G♪
「何言うとん、お前、マジでわけわからんぞ」
そして彼女の腕を乱暴に掴んだ。
「いやっ、放してっ!」
彼女は暴れた。
しかし男の膂力りょりょくは強い。
「ふざけんなやっ、放すかボケェッ!」
彼女がさらに暴れる。しかしビクともしなかった。
「もう嫌なの。その人はね、ふさふさなんだからぁぁぁぁぁぁ!!
ガビーン。
男は膝から崩れ落ちた。
彼の頭の泡立ちがすでに落ち着いていた。
頭皮が良く見える。
「せめて、これからもずっと、やさしくしてあげてね。さよなら」
ぐすん。
彼女が部屋を飛び出て行ってしもた。  (珍話・完)

【本項のまとめ】
抜け毛が目立ち始めた男の、洗髪のやさしさたるやマジモンです。
なによ、その手付き、やさしすぎっ♪

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