最近続いた不運②~後編・液晶画面破壊の原因は神界の覇権争い~
【前回のあらすじ】
二人が出会うキッカケを作ったのは山本君の狡猾さがゆえであった。山本君はずる賢く、とにかく演技が上手い。まるでそれが偶然であり運命の出会いのようなシチュエーションをいともたやすく作り出してしまうのだ。ただし、外見は神様が「天は人に二物を与えないんだよ、ほんとなんだよ!」としつこくアピールしているかのような残念さだった。
打って変わって、山下さんは超がつくほどの美人であった。加えて性格も良かった。人の言うことをすぐに信じてしまうピュアフル美人・山下さんである。山本君に騙されているとも知らずに、彼との出会いを運命だと思い込んでしまうのだ。実際、彼への愛情表現はそれはもぅとてもとても魅力的で、誰もが羨ましがるカップルとなっていた。
そんな周囲公認、あこがれのカップル・山モトコンビに事件が降りかかる。なんと、山下さんこそが山本君を上回る狡猾さと演技力を持つ、悪女だったのである。
神様が「女性は特別!」とでもアピールしているかのように天は人に二物を与えていたのだ。
男達は口を揃えて言った。
「わーいざまーみろ、山本めっ!」
男の嫉妬は、かくも深い。
というお話をしなかったことだけは覚えている。
では話を続けよう。
前回の記事に添付した写真にあるとおり、液晶画面にヒビが入る事件が起こったのだ。タッチパネル式画面に、これは致命的であった。
電源は入る。液晶画面も映る。しかしマウスポインターが消え、タッチパネルのどこかを常に押しているような状態になるのだ。だから勝手にウィンドウがポップアップしたり、何かの項目を勝手に選択されたりと、実質何も操作することができない。結局、強制的に電源を落とすことになる。
使用不能。
こうなるに至った顛末は次のとおりである。
その日、目が覚めた瞬間、僕は異変に気付いた。身体が非常に重いのである。「まさか、そんな!」との焦りを感じた。これは、病院に行かなければならないなと思った。
そう、その日は歯医者の予約日だったのだ。
危ない、ついうっかり忘れるところだった。それが焦りの原因。身体が重いのは、前日の食べすぎが原因である(笑) お腹ぷっくり。
さて、歯医者の予定日だからといって、パソコンの液晶が僕の精神衝動で割れる、というポルターガイスト的なことは有り得ない。あり得れば夢があってよろしい。さらに、腹回りが豊穣ならば液晶画面にとってはふんわりやわらか緩衝材となるので割れるどころか守られる。
つまり、歯医者も僕の腹回りもパソコン破壊には無関係である。
「え? 何? じゃあこの前置きは?」
との読者諸氏の声が聞こえてきそうである。
そんな声にはこう答えよう。
「ごめんなさいですぅ」
では、本題に入ろう。
僕はいつものようにパソコンを携帯し、用事の出先へと向かった。
もしも街中を歩いている時にすれ違った乙女に目が行き、うっかりパソコンを落としてしまったのならば話は簡単であった。
そんな時は、
「あなたが美しすぎるせいで僕のパソコンが壊れてしまったぢゃないか!」
「は?」
「どうしてくれるんだよっ!」
「えと、誰?」
「僕が誰かだって! よ~く分かった。そんなに僕に興味があるのならばそこのカフェでじっくりお話をしたり聞いたりしてあげようぢゃないか。仕方ないなぁもぅ♪」
と、ピンチを即座にチャンスに変えることにやぶさかではなかった。
もちろんそんなファンタジックなことがあれば、乙女に代わって警察がお話を聞いてくれることになる。気を付けたし気を付けたし。
幸か不幸か道中は何事もなく、僕は出先にたどり着くことになった。
そこはとあるオフィスの一室である。
僕は扉の前で背筋を伸ばし、大きく息を吸い込んだ。そしてノックをしてからノブを回した。
「失礼します。本日天界は適当の神より使わされた、お腹まわりぷっくりがとっても愛らしい天使、乃楽です」
応えたのは作業着の男であった。
「ややや、あなた様はかの有名な乃之楽章テキトウ大明神がご友人・乃楽様ではございませんかっ! お噂はかねがね伺っております。ささ、どうぞ中に」
「噂ですか? 一体どんな?」
「それはもう非常に紳士的で外見はもちろんのこと人格が特にスバらしいとか」
「ふふん、ま、神格ですがね」
そんな僕のことを人扱いしたこの男こそが失礼を絵に描いたような男、否、シツレイ神が下界に送っていた天使だったのである。ここでは彼のことを【天珍】と呼ぶことにする。
天珍は僕を隣のデスクに案内し座るように促してきた。
僕はパソコンを入れたトートバックをデスクの上に置いて座ることにしたのである。今思えば迂闊だった。
天珍が話しかけてきた。
「わざわざのご足労、有難うございます。いやぁ今日はほんとに有意義な一日になりそうです。実は今朝ですね、黒いカラスの群れが頭上を通り過ぎる夢を見たんですよ」
「ほぅ、その中に白い一羽を見たとでも?」
「いえいえ、糞が顔面に落ちてきました」
「で?」
「え、それだけですが」
「な、なんて失礼な前置きっ。貴様、まさかシツレイ神の手先かっ!」
「はっ、しまった!」
「危うく謀られるところであった」
「くくく、バレてしまっては仕方がない。その通り、我こそはシツレ――――」
ガジャーン!!
激しい衝撃音がオフィス内に響いた。音は僕たちの足元からであった。視線をおろすと、床にあるはずのないものが、転がっている。
パソコンの壊れる音が耳に残っていた。
僕がキッとシツレイ神の手先の顔を見ると、彼もこちらを見ていた。
「いや、俺ぢゃないし」
「いやいや、僕は動いてなかったんだから、あんた以外にあり得ないだろう」
「いやいやいや、それはお前がお前のデスクの上に置いたはずだろうに」
「いやいやいやいや、デスクとデスクの境目のそっち寄りに置いたってんだ!」
「違いますぅ! そっち寄りでしたぁ。だからそれを落としたのはお前自身だ。自業自得だな」
「なにをぅ、シツレイなヤツめっ! パソコンを壊すなんて恐れ多いこと、貴様のような物の価値が分からない奴以外にあり得ない」
「なんだとっ、テキトウなことばっかり言うなよっ!」
僕が飛び掛かるのと同時に、彼も飛び掛かってきた。
その時、天井から2本の足がすり抜けて、降りてきたのである。
我が盟友にして上司・乃之楽章テキトウ大明神であった。
「お前たちはまた喧嘩をしているのか。はぁぁ、まぁどうでも良いんだけど」
「どうでも良くぬわい。あ、ちょうど良い。君のテキトウな神通力でこのパソコンを壊したのが僕かコイツのどちらか、その真実の過去を見せてほしい」
「えー、やだぁ。メンドくさいし。あと、面倒臭い!」 【小話・完】
ということがあったかどうかは分からないが、デスクの上に置いておいたパソコンが、僕がちょっと目を離した隙に床に落ちたのは間違いない事実である。
ただ、そうなるに至った経緯が全く分からないのだ。なので、前述の小話ようなトリッキーな経緯で落下した可能性も完全に否定することはできない。ちなみに、落下付近にはとある人物がいたのだが、確証なくその人を疑うことは人格が特にスバらしい僕にはとうていできっこない。
液晶画面の破壊はメーカー保証対象外である。有償修理はなかなかにお高いのだ。パソコンそのものの買値が28000円だけに、液晶画面の修理にその半額以上もかかるとすれば、納得できないものがある。さらに言えば、のちのち液晶以外の目に見えない部分に故障が生じていた、などということもあり得る。そう考えれば、非常に勿体ない話ではあるのだが、新しいものを買った方が良いという結論に至ったわけである。
しかし、前回の車のライトの不運とは違い、パソコンの不運はお金よりももっともっと大きな問題をはらんでいるのだ。
車の場合、車を所有する以上、故障して思わぬ出費が生じることをある程度想定できていなければならない。もちろんその限度はあるのだが、車の修理費に10万円というのは、まだ想定内だと言える。できれば支払わない方法を選択したいところだけれど、お金を支払うだけで元通りになるのならば、それはそれで楽なものである。
それに比べればパソコンはたったの3万円弱。値段だけを見れば車のライトに比べたらどうということもない、ように見える。
しかし、僕にとっては、車の数倍ショックが大きかった。
というのも、パソコンはかなりの時間と労力を割いて、その積み重ねによって自分が使うために最適化されたパソコン内部環境を構築する。
購入後5カ月、徐々にだけれど設定をいじったりデータを読み込んだり、ソフトをインストールしたりと最適化作業を積み重ねてきた。
それをまたイチからやり直さなければならないのである。お金で解決できるのならばしたいものであるが、こればっかりはどうしようもないことなのだ。
さて、しかしながらこんな不運の中にも実は幸運があった。
読者諸氏はそれが何なのか分かっただろうか?
それこそがこの不運で学ぶことができた最大の教訓なのである。
【本項のまとめ】
この車とパソコンの不運は連続したのだが、パソコンのショックのおかげで車の不運のことは小さなことだと思えるようになったのだ。まさにショック療法の有り難い恩恵。
ほ、ほんと言うとだけどね。。。
な、泣いて良いかな(。◕ˇдˇ◕。)グスン
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